TOP<< >>コラム3





【コラム2回目】 トライアルはだれのため?

 前回は,トライアルには2種類あるということに加えて,トライアルが実施されている構造には無理がありそうだぞということまで指摘してしまいました。

 ではそのトライアル,そもそもどうして行われるのか,今回整理してみましょう。

 前回のコラムをお読みになり,「やはりわたしの翻訳は合格してしかるべきだったのだ!」なんて声があるかもしれません。実際にそうかもしれません(し,そうじゃないかもしれません...)。まあそれはともかく,それで翻訳会社を非難するのは筋が違ってきます。

 かりに入社試験なんかで不合格だったとすると,「わたしを落とすなんてどういうことなの?」と思うのは人情でしょうけど,評価の基準は会社が決めるのだから文句を言っても仕方ありません。自信を失う必要もありません。これと同じことです。トライアル不合格=あなたの実力がないことの証明,では必ずしもありません。

 そもそもトライアルは翻訳会社が優秀な翻訳者を確保するため、つまり翻訳会社が自己都合で行っている制度です。かりに翻訳者側から見て不完全なものであったとしても外野があれこれ批判できることでもないのです。結局のところ,これも入社試験を実施する会社も同じ話になりますが,要は実施元があなたを欲しいと思うかどうか,それだけの話です。

 翻訳会社にしてみれば,特別に翻訳者を育てていこうというわけでもない限り,丁寧に添削して訳者にフィードバックする必要はありません。またそんな義理があるわけでもありません。ですから翻訳者の側もそんなことを期待してはいけません。(それを期待するならそれ相応の授業料を払って優良な翻訳学校に行きましょうという話になります。)評価の過程を公表することもありませんし,それが非難されるべきことでもないでしょう。仮に適切な評価者をあてがうことができずに実は良い訳を落として悪い訳を拾い上げているような過失があっても、それは社内的な問題にすぎません。成果物に対して翻訳料を支払うこともありません。(実際、合否の結果すら通知してくれない翻訳会社もたくさん存在するのですよ。)

 つまりわかりやすく言えば,現行のトライアル制度は,翻訳会社にしてみればかりに多少不完全であろうとやらないよりはやった方がよい,翻訳会社が主導する,翻訳会社のための制度なのです。
(3回目に続く)

<<コラム1 ↑ページのトップ >>コラム3